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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)6428号 判決

原告

株式会社タツソー

被告

坂口俊治

主文

一  被告は原告に対し、金二八万円とこれに対する昭和五六年二月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その三を原告の、その一を被告の、各負担とする。

四  この判決は、原告勝訴の部分にかぎり、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

(一)  被告は原告に対し、金一〇九万八三一〇円とこれに対する昭和五六年二月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

(三)  この判決は仮に執行することができる。

二  請求の趣旨に対する答弁

(一)  原告の請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

(一)  交通事故の発生

昭和五五年一二月七日午後二時五〇分頃、東京都練馬区北町二丁目一二番先交差点(以下本件事故現場という。)において、被告運転の普通乗用自動車(車両番号練馬五七な七四三〇―以下被告車という。)と、原告所有、杉山富夫運転の普通乗用自動車(車両番号練馬三三そ七一〇七―以下原告車という。)とが、被告の過失によつて衝突し、原告車が損壊した。

(二)  損害の発生

原告車が損壊したことによつて、原告は、以下の通り、合計一七二万三六三〇円の損害を蒙つた。

1 車両損害 一〇四万九六五五円

原告車の本件事故当時の時価額は一五四万四六五五円であるが、本件事故によつて、その車体の本質的構造部分に重大な損傷を生じ、修理をしても高速走行には危険を伴うとのことで、修理して使用することを断念せざるを得ず、右時価額一五四万四六五五円から下取価額四九万五〇〇〇円を控除した一〇四万九六五五円の損害を蒙つた。

2 代車使用料 四一万六〇〇〇円

本件事故当日の昭和五五年一二月七日から、示談交渉が継続していた翌五六年一月二七日までの間、代車を使用せざるをえず、一日八〇〇〇円合計四一万六〇〇〇円の損害を蒙つた。

3 諸費用 一五万七九七五円

原告車を購入する際支出した諸費用二〇万九二五〇円の内一五万七九七五円が無駄になり、同額の損害を蒙つた。

4 弁護士費用 一〇万円

(三)  よつて、原告は被告に対し、民法第七〇九条に基づき、右(二)1ないし4の合計一七二万三六三〇円の内一〇九万八三一〇円と、これに対する原告が本件訴訟の追行を弁護士に委任し、その費用一〇万円を支払つた日の翌日である昭和五六年二月一一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを請求する。

二  請求の原因に対する認否

(一)  請求の原因(一)は認める。

(二)  同(二)1は否認する。

同(二)2は否認する(争う)。被告が使用料を負担すべき期間は原告車を修理するのに必要な二〇日間である。示談交渉が継続していたこと、使用料が一日八〇〇〇円であることは否認する。

同(二)3は否認する(争う)。諸費用の金額は知らないが、全損を前提とする主張である。

同(二)4は争う。

三  抗弁

(一)  昭和五六年三月一三日、被告は原告に対し、原告車の修理費三四万五三二〇円を支払つた。

(二)  被告は昭和五五年一二月八日から翌五六年一月一四日までの代車使用料を負担した。

四  抗弁に対する認否

(一)  抗弁(一)は認める。但、車両損害の一部である。

(二)  同(二)につき、昭和五六年一月一一日までは認めるが、その余は否認する。

第三証拠〔略〕

理由

一  交通事故の発生について

昭和五五年一二月七日午後二時五〇分頃、本件事故現場において、被告運転の被告車と、原告所有、杉山富夫運転の原告車とが、被告の過失によつて衝突し、原告車が損壊したことは、当事者間に争いがない。

二  損害の発生について

(一)  証人岩田の証言により真正に成立したと認められる甲第一号証の一ないし四と同証人の証言によれば、昭和五五年一二月九日と一三日に、原告車の損害を調査した東京海上火災損害調査株式会社の同証人は、原告車を修理することによつて通常の走行性と安全性を回復しうると判断したことが認められ、成立に争いのない甲第六号証と証人高山の証言によれば、昭和五六年四月一六日、坂井貞夫が原告車を買受け、使用しており、原告車が通常の走行性と安全性を具備していることが認められ、高速走行に危険性を伴う等の可能性がある旨の、証人鈴木、同堺の各証言はいずれも推測の域を出ず、他に、右認定を左右する証拠はなく、原告が原告車を修理して使用することを断念せざるをえないような事情が存在したことを窺わせる証拠もない。

甲第一号証の一ないし四、証人鈴木と同岩田の各証言によれば、原告車の修理に三四万五三二〇円を要することが認められ、右認定を左右する証拠はない。

成立に争いのない甲第三号証と証人岩田の証言によれば、原告車の本件事故当時の時価額は一四二万円であることが認められ、原告代表者本人尋問の結果により真正に成立したと認められる乙第一号証によれば、公認会計士の北村義晴はその時価額を一五四万四六五五円と評価しているけれども、右は課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法による価格であり、他に右認定を左右する証拠はなく、また、証人高山の証言によれば、前記坂井は一一七万円で原告車を買受けたことが認められ、これに反する証拠はなく、右の事実によれば、本件事故による原告車の評価損は二五万円であると認められる。

(二)  証人鈴木の証言によれば、原告車の修理に必要な期間は二〇日間程度であることが認められ、これに反する証拠はなく、また、本件事故当日、原告が代車を使用したことを窺わせる証拠はなく、原告が右修理に必要な期間をこえて代車を使用せざるをえないような事情が存在したことを窺わせる証拠もない。

従つて、被告が使用料を負担すべき期間は、昭和五五年一二月八日から翌五六年一月一一日以前まで、である。

(三)  原告が主張する諸費用一五万七九七五円は、原告車が本件事故によつて物理的又は経済的に修理不能になつたか、その買替えが社会通念上相当と認められることを前提とするが、その前提を欠き失当である。

三  抗弁について

原告が被告に対し、三四万五三二〇円を支払つたこと、及び、原告が昭和五五年一二月八日から翌五六年一月一一日までの代車使用料を負担したことは、いずれも当事者間に争いがない。

四  弁護士費用について

以上により、原告は被告に対し、前記二(一)の三四万五三二〇円と二五万円の合計五九万五三二〇円から、前記三の三四万五三二〇円を控除した二五万円を請求しうるところ、原告が本件訴訟の追行を弁護士に委任したことは本件記録上明らかであり、当裁判所は、本件事案の内容、審理の経過、右認容額等を考慮し、その費用として三万円を被告において負担すべきであると考える。

五  以上の次第で、原告の本訴請求は、前記四の二五万円と三万円の合計二八万円と、これに対する昭和五六年二月一一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条を、仮執行の宣言について同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 田中優)

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